決断

八月にようやく新居生活が始まる。現在建設中で、妻の実家で仕事をしていると窓の向こうから大工さんの働く音や声が聞こえてくる。これがなかなか心地いい。これまで、どこに住むか?は、何度も迷った時期があったけど、この辺りの景色がずっと好きだったし、スタジオのご縁もあったりして、ここに住む決断をして今は本当に良かったと思っている。

そういえばこの間、この町の老舗和菓子屋さんが閉店した。いつの間にかシャッターが閉まっている日が長く感じ、のちに閉店したと知った。二度ほど買い物に伺ったことがあって、店内に開業当初店主が店先で一人写ったモノクロ写真が飾ってあった。胡蝶蘭のような祝い花も写っていたので、僕はオープン初日かなぁと思い眺めていた。いい写真だった。店主のおじいさんは感じの良い人だったので、なおいい写真に思えた。写真はおじいさんの見た目年齢からすると、多分五十年ほど前だと思う。正直、数える程度しか行っていない客の僕が言うのも変だけど、閉店と知った時は悲しかった。自分がこれから住む小さな町に、老舗和菓子屋さんがあるのは誇らしく、嬉しかったからだ。なので自然と悲しい気持ちが湧き上がってきた。それに、閉店だからといって盛大に最後の営業日を迎えた訳でもなく、ひっそりと終えたようなシャッターの佇まいがあった。実際はご近所の人が駆けつけて、たくさんのお客さんで賑わったのかもしれないけど、なんだか勝手にそんな風に感じてしまった。四十年、五十年と、明くる日も営業を続けてきたお店を閉めるって、どんな気持ちなんだろうか。きっと数えきれないほど、たくさんの物語があったと思う。

今でも週に二回以上はそのお店の前を通る。つい、いつも目がいってしまう。


スタジオプランを作りました

今年からお借りしているスタジオにて、撮影プランを作りました。本日より、ご家族などの記念撮影の受付は、こちらが基本価格とさせて頂きます。

月乃写真室の古い民家でのスタジオ撮影では、記念写真全般、プロフィール撮影、ウェディングの前撮りなども可能です。畳の広いお座敷のおかげで、小さなお子様もゆったりと過ごすことができますよ。ご依頼、お待ちしております。

詳細は以下まで。

撮影について


知ろうとすること

妻が手作り子ども服を製作販売しており、来月、初の受注販売会を行うことになった。なので近頃の平日の昼間は、ミシンの音が家中に響き渡る。僕は縫うことは全くできないけど、以前まで長くアパレル業界にいたので、一枚の服が出来上がるのに大変な労力がかかることは理解しているつもりだ。だけど、それもやはりこんなに身近で製作している光景を実際に見ていると、本当に大変な仕事だなぁと痛感する。ある程度大きな縫製工場であれば分業制だと思うけど、妻は一人で全て行っているから尚更である。販売会は、僕の大好きなあのお店です…。お楽しみに。

写真とは関係ないけど、今日は気分転換も兼ねて無印良品へ行ってきた。先日の写真展のフライヤーを置かせてもらっていたので、回収がてら店長さんにお礼のご挨拶もさせてもらった。四日市の近鉄百貨店にある店舗なんだけど、東京から転勤で来たと話す店長さんは、「この町の魅力をもっと知り、お店として発信していきたい」と話していた。偉いなぁと思った。地元の人でさえ、長年住んでいるにも関わらず、その町の歴史や魅力を知らない人は結構多い。ここでいう知る、というのは、美味しい食べ物も当然そうだけど、昔から今も変わらず残り続けているものである。〝コンビナート〟や〝四日市ぜんそく〟なら学校の教科書でも出てきたけど、それ以外の事は授業で教えてもらったりした覚えはない(たぶん)。ほとんどの子たちは、大きくなったらすぐ外の世界に興味を示し出して、自分の町をよく知ることなく大人になっていったり、あるいはそのまま県外へ出て行ってしまうような気がする。正直、以前までは僕も完全にその一人だった。「田舎には何もない」と言ってしまう人は、そもそも知ろうとしていないのである。「こんな場所があるよ」、「君の町に、こんな世界もあるよ」と、子どもたちに教える事ができるのは、大人しかいないのだ。魅力を見つける、という言い方よりも、まずは足を運んで知ろうとすること。それが大切である。


hair salon IIU 2021 S/S

以前より何度か撮影させて頂いていた、ヘアーサロンIIU(トゥーユー )さんの2021年春夏撮影を全て撮り終えました。ヘアーサロンのモデル撮影というと、ヘアを細部まで固めて室内で撮る、いわゆる〝作品撮り〟な印象ですが、あくまで自然体なスタイルを求めた今回の撮影。固定されない、こういった自由なスタンスのヘアーサロンの撮影がもっと増えたら楽しいなぁと思います。ご相談、お待ちしております。

おしごと hair salon IIU vol.2


育てていく

先日、スタジオに初めてお客さんが。しかも一日で二組も。嬉しかった。ゆっくり過ごしてもらえたようで、前日までの掃除も頑張って本当によかった。(手伝ってくれた家族よ、ありがとう…。)

ここは昔、住宅だった。その後、町のイベント事や宴会などに使用されていたりした。貴重な建物なので、玄関を開放して誰でも見学できるようになっていた時期もあったけど、ウイルスもあってなのか、ここ数年はずっと閉まったまんまで、よくお庭だけが開放されていた。この家に、我が家以外の家族が集まった風景は何年ぶりなんだろうか。この日は僕を入れて五人程度ではあるけど、五人もいれば家中に楽しい声と足音が響き渡って、家が喜んでいるように思えた。前回ここを開けた時からは一ヶ月ほど経過していて、古い家は気密性がないからか、あっという間にホコリが溜まっていた。更に梅雨とあって、お庭なんて雑草だらけ。なかなか手入れが大変なんだけど、掃除をすればするほど、自然と愛着が湧いてくる。いつかここでたくさんの人を呼んで、楽しいことがしたい。作品に触れたり、美味しいものを食べたり、子どもたちは元気に走り回り、新しい人との出会いもある、そんな場所でありたい。想像が膨らむばかりである。

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