子どもたちが出会うもの

メリーゴーランドでの写真展『廻り、出会う、メリーゴーランド』が、昨日で終了した。

当然ながら、これほどメリーゴーランドで時間を過ごしたのは初めてだった。スタッフのシノさんによると、これまで展示やイベントを行った作家さんの中で一番僕が在廊出勤時間が長かったらしい…!嬉しいのやら、大して多く仕事が無いからなのか…、なんとも複雑な気持ちにはなってしまったけど、展示は作家が在廊しないと意味が無いと思ってしまうほど僕は在廊に重きを置いていたので、結果的にたくさんの方に毎日お会いできたのは本当に嬉しかった。

これほど長くお店にいたのでいつもお店を観察させてもらったんだけど、子どもが本を真剣に読む姿は、凄くいいなぁと思った。メリーゴーランドは創業当時から基本的に試し読みがオッケーなので、店内の至るところで子どもや大人が本を読んでいる。特に、切り株の手作り椅子に座って読む姿がとてもいい。これはうちの娘もお気に入り。天井まで続く本棚にかかった木のハシゴと、この切り株の椅子はメリーゴーランドの定番の風景。子どもたちは周りが見えなくなるくらいに目の前の本が描く世界に夢中となって、頭のなかで想像を膨らませ、まるで冒険に出ているよう。中には集中力がすぐに切れてしまい、フラフラお店を駆け回る子もいれば、おもちゃコーナーへ移動して遊び始める子もいて様々あるけど、やっぱり本を一人で読んでいる子を見かけると、なんだか嬉しくなり感心してしまう。

シノさんにも会期中同じ話しをしたんだけど、「子どもはいつも自由でいいよなぁ」と言う大人がたまにいる。僕は、子どもは全く自由じゃないと思っている。好きな場所へ、自分の好きな時間に行くことができないし、行く手段もなく、何においてもまず親の許可がいることがほとんどである。どちらかといえば、不自由だと思う。だからこそ大人は、狭い世界のなかでも、子どもが知らない広い世界をもっと見せるべきだし、学校の勉強も大切だけど、たくさんの今ある文化を見せて伝えるべきだと思っている。本屋さんで本を広げて夢中になる子を見ていると、もしかしたらその子は、今この瞬間、人生が変わるキッカケを生んだのかもしれない。それは大袈裟だとしても、いつかその本とまた再会する時、何かの転機になるかもしれない。写真だってそうである。写真には、いつも自分で見ている世界が、ある人が見つめる世界は、こう違って見えているのか。と、子どもだって中にはカルチャーショックを受ける子もきっといる。文化や作品、つまり〝面白い大人たちが生んだ渾身の作品〟によって、その子を救ったり、人生を変えてしまうような、大きな影響を与えるのかもしれないのだ。ましてや、東京でも大阪でもない、地方と呼ばれる田舎に今暮らしている以上は、どうしても子どもたちは『文化』という言葉から遠い場所にいるように思うから、僕たち大人は、新しいモノや人に出会う機会を増やしていってあげて、子どもたちがこれから進む道の幅、みたいなものを、できる限りぐっと広げてあげたい。メリーゴーランドはそれをもう既に四十年以上も前から実行し、伝えていっているように思う。自分は、なにができるのだろうか?まだわかっていないけど、メリーゴーランドと今回少しでもこうやって関われたことで、考えるキッカケを与えてもらった。たくさん勉強させてもらい、本当に感謝しかない。明日から、また頑張ろう。


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