春がくる

今年もまた春がやってくる。思えば昨年の春は、未知な不安にどう動き、どう身振りをすれば良いか本当にわからなかった。せっかく満開になった桜も、本当は見に行かない方が良いよなと思いながらも、でもやっぱり一年に一度しか見られないから、毎年必ずいく場所へ家族で向かうことにした。なんだか罪悪感が残りながらも、車を停まらせる。すると案の定、僕たちだけだった。しばらく佇んでいると、車が一台やってきて、降りてポケットから取り出したスマホで数枚写真を撮って帰っていく。それが数回続いた。そしたら、また現れた車を見ていたら、義理の父が降りてきた。どおりで、どこかでみたことがある車だった。父は、桜が咲くこの場所について「ここは昔なぁ…」と、毎年同じ話しを僕たち家族に丁寧にしてくれる。この日は散歩しに現れた近所のおじさんとまたその話しをして、あまり盛り上がることはないのだけど、少し嬉しそうだった。おじさんはNikon COOL PIXのカメラを片手に握りしめて、頭上を見上げ桜を眺めていた。あのカメラで普段は何を撮っているのかなと、ぼんやりと気になってしまった。

世の中が少しでも落ち着いていれば、この場所で記念撮影会がしたいなぁと、写真を見返していたら、ふとそんなことを考えてました。こんな田んぼしかない田舎に人が集まってくれるのかがわからないけど、その時期に余裕があれば、企画を作ろうと思っています。いや、やらないかも。今年は純粋な気持ちで目一杯、春を楽しめますように。


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